吉永小百合 声の秘密

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吉永小百合 声の秘密 第2版
著名人の音声分析 1

著者: 石神久資
発行所: アートジャム
書籍形式: 電子書籍mobi(Kindle端末、iPad、iPhone、Androidタブレット、Androidスマートフォン用)
ページ数: 紙書籍に換算して212ページ
販売書店: Amazon Kindleストア
価格: 480円
2016年9月17日 初版発行
2016年12月14日 第2版発行

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書籍の紹介

あなたは、知り合いの声を聞けば、それが誰の声か? わかるはずだ。

なぜ、誰の声か、わかるのだろうか。

それは、人の声にははっきりした個性があるからだ。声に個性があるのは、人の容姿に個性がある事と同じである。

あなたの好きな俳優やタレントの声であれば、それが誰の声なのか、一瞬でわかるだろう。

かつて、歌舞伎では「一声、二顔、三姿」と言って、外見や動作が美しいことよりも、声が大きく個性的であり滑舌が良いことことが重要だとされてきた。

しかし、現代の演劇、特に、映画とテレビでは、マイクを通して声を大きく加工することが普通になり、そのせいか、声の個性はあまり重視されなくなった。

そうした世相を現しているのか、声の出し方について今までいろいろな本が書かれてきたが、声の個性について詳しく書かれた本はなぜか今までほとんどない。

しかし、今の時代、あえて声の個性に注目して俳優の演技を楽しむのも面白いのではないだろうか。

本書では、昭和を代表する女優の一人である吉永小百合の声を、10代から60代まで、吉永の代表作となる映画15作品について、主に、彼女の声の成長と変化を探りながら取り上げた。

声の個性の中で最も客観的に示しやすいのが声の高さである。そこで、本書では、声の高さを、声帯の周波数で示してみた。声の高さは、出演した作品や撮影時の年齢によって変わってくる。それらを比較しやすいように、五線譜に描いて表示した。

それ以外の声の個性

・ 声域(高音から低音までの範囲)、
・ 音量(声の大きさ)、
・ 女性らしさ、
・ 滑舌(言葉の明瞭さ)、
・ 声のかすれなど

は、主に文章で違いを表現した。

さらに、声についてだけでなく、吉永を知るために必要な最小限の情報も網羅したので、サユリストにとっても、また、そうでない人にとっても、楽しめる内容になったと思う。

なお、本書では各作品の台詞の声のみを分析している。歌声については分析していないので、ご承知願いたい。

[本書で分析した共演者たち]

吉永小百合以外に、各映画作品で共演している以下の俳優たちの声も簡単に分析・比較した。

『あいつと私』(1961年)

・ 芦川いずみ
・ 石原裕次郎
・ 酒井和歌子
・ 吉行和子
・ 小沢昭一
・ 滝沢修

『キューポラのある街』(1962年)

・ 東野英治郎
・ 浜田光夫
・ 加藤武
・ 吉行和子

『青い山脈』(1963年)

・ 芦川いづみ
・ 二谷英明
・ 浜田光夫
・ 高橋英樹
・ 南田洋子

『いつでも夢を』(1963年)

・ 橋幸夫
・ 浜田光夫
・ 松原智恵子

『伊豆の踊子』(1963年)

・ 高橋英樹
・ 宇野重吉
・ 浜田光夫
・ 浪花千栄子
・ 南田洋子

『潮騒』(1964年)

・ 浜田光夫
・ 清川虹子
・ 松尾嘉代

『愛と死を見つめて』(1964年)

・ 浜田光夫
・ 笠智衆
・ 宇野重吉
・ ミヤコ蝶々

『あゝひめゆりの塔』(1968年)

・ 浜田光夫
・ 和泉雅子
・ 乙羽信子
・ 二谷英明
・ 東野英治郎
・ 渡哲也

『戦争と人間(第二部)』(1971年)

・ 浅丘ルリ子
・ 佐久間良子
・ 栗原小巻
・ 岸田今日子
・ 和泉雅子
・ 滝沢修
・ 北大路欣也
・ 山本圭
・ 高橋英樹
・ 三國連太郎
・ 地井武男

『男はつらいよ』(1972年)

・ 渥美清
・ 倍賞千恵子
・ 前田吟
・ 笠智衆

『細雪』(1983年)

・ 岸恵子
・ 佐久間良子
・ 古手川祐子
・ 伊丹十三
・ 石坂浩二
・ 白石加代子

『時雨の記』(1998年)

・ 渡哲也
・ 林隆三
・ 佐藤友美
・ 岩崎加根子

『千年の恋 ひかる源氏物語』(2001年)

・ 天海祐希
・ 渡辺謙
・ 常盤貴子

『母べえ』(2008年)

・ 浅野忠信
・ 坂東三津五郎
・ 檀れい

『北のカナリアたち』(2012年)

・ 柴田恭兵
・ 里見浩太朗
・ 宮アあおい
・ 勝地涼
・ 小池栄子
・ 松田龍平
・ 森山未來
・ 満島ひかり

各映画作品については、ストーリーをできるだけ詳しく紹介し、その雰囲気を伝えるため、それぞれの映画のオープニング画面や参考になるイラストも示した。

また、各作品に登場する関連地域あるいは撮影地を簡略に示す地図も掲載した。

人名などの難読漢字については出来るだけ多くルビをつけ、読みやすくした。

 

この『著名人の音声分析』シリーズが、あなたが著名人の声の個性について考えるきっかけになれば幸いである。

※本書は歌声については触れていません。会話の声だけを説明していますので、ご了承ください。

目次

はじめに
1. 吉永小百合―声の秘密
2. 『あいつと私』
3. 『キューポラのある街』 ( この項目の内容は下記の「内容の一部」で紹介しています。)
4. 『青い山脈』
5. 『いつでも夢を』
6. 『伊豆の踊子』
7. 『潮騒』
8. 『愛と死を見つめて』
9. 『あゝひめゆりの塔』
10. 『戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河』
11. 『男はつらいよ 柴又慕情』(シリーズ第9作目)
12. 『細雪』
13. 『時雨の記』
14. 『千年の恋 ひかる源氏物語』
15. 『母べえ』
16. 『北のカナリアたち』
付録A 音声分析方法
あとがき
参考文献
著者紹介

内容の一部

3. 『キューポラのある街』

DVD

『キューポラのある街』 [DVD]

早船 ( はやふね ) ちよが書いた小説『キューポラのある街』は1962年に日本児童文学者協会賞を受賞したが、それを映画化したのがこの作品である。吉永小百合はこの作品で一挙にスターになり、演技力が認められてブルーリボン賞主演女優賞を受賞した。

[基本情報]

英語タイトル: The Street with Cupolas または Cupola. Where the Furnaces Glow
1962年(昭和37年)4月8日公開、モノクロ99分
製作: 日活株式会社
クランクイン(撮影開始日): 1961年12月24日
クランクアップ(撮影終了日): 1962年2月1日
原作: 早船 ( はやふね ) ちよ
監督: 浦山 桐郎 ( きりお )
脚本: 今村昌平、浦山 桐郎 ( きりお )
美術: 中村公彦
音楽:  ( まゆずみ ) 敏郎
撮影: 姫田真佐久
出演:
石黒ジュン: 吉永小百合
石黒辰五郎(石黒ジュンの父): 東野英治郎 ( とうのえいじろう )
石黒トミ(石黒ジュンの母): 杉山徳子
石黒タカユキ(石黒ジュンの弟): 市川好郎
金山ヨシエ(石黒ジュンの友達): 鈴木光子
リスちゃん(石黒ジュンの友達): 青木加代子
サンキチ(石黒タカユキの友達): 森坂秀樹
美代(サンキチの母): 菅井きん
塚本克巳(鋳造工): 浜田光夫
塚本うめ(塚本克己の母): 北林谷栄
松永親方(鋳物工場・松永鋳工の社長): 殿山泰司
ノッポ(松永親方の息子): 川勝喜久雄
野田先生(ジュンの担任教師、あだ名は「スーパーマン」): 加藤武
女工員: 吉行和子

[解説]

キューポラ(キュポラ、溶銑炉、cupola furnace)とは、鉄製品の材料(鉄の地金)を、コークス(石炭を蒸し焼きにして作られる燃料)で熱して、地金を溶解させて、それを型に入れて冷やして固まらせて鉄製品( 鋳物 ( いもの ) )を作るための装置のことである。キューポラ係りの工員は高熱の工場内で過酷な作業を行う必要がある。

キューポラ

小型のキューポラの例: 「南部鉄器 製造行程のあらまし」より

当時は埼玉県川口市にキューポラの設備を備えた工場が多かったため、川口市を舞台にしてこの映画が作られた。石黒ジュン(吉永小百合)の父・辰五郎(東野英治郎)は、大型のキューポラのある鋳物工場で働いている工員という設定である。

吉永小百合は、私立精華学園女子高等学校在学中に、この映画に主演した。撮影時には16歳だった。

石黒ジュン(吉永小百合)は中学3年生の明るい少女という設定だ。

しかし、吉永は当時の中学3年生にしてはかなり大人っぽい。また、ジュンの家は、鋳物職人の父が失業し、母は出産で内職ができなくなり、ジュンを筆頭に小さい子供が3人(途中から4人)もいるという貧困家庭である。それなのに、吉永は健康優良児のようにやや小太り気味であり、元気すぎる。さらに、ほぼスポーツ万能で、石垣をすいすいとよじ登ったり、道路を弾丸のように走り抜けたりと、すごすぎる。確かに、ジュンはおとなしい大和なでしこではなく、怖いもの知らずの荒々しい少女であるが、それにしても、多少の違和感がある。しかし、この映画で、一生懸命前を向いて進んでゆく、貧しいが、明るく前向きで健康的な少女という吉永のイメージが確立され、吉永小百合ファン(サユリスト)が大勢生まれた。こうして、日活映画では、吉永は、石原裕次郎のような不良っぽいヒーローとは違う、まじめで健全なヒロインに育った。

実際の吉永は、ジュンほどではないが、ある程度ジュンに近い性格をしているようだ。

吉永の声は、他の多くのアイドルのような透明で澄んだかわいい声ではない。やや息が混じって雑音が入り、声がガサガサし、力強い。こうした生活感が強く、庶民的な、親しみやすい声は、ジュンの役にぴったりである。

この映画で、彼女の声の平均周波数は267 Hzであった。

この映画の撮影時期は、ちょうど日本の高度成長期に重なっている。ジュンのひたむきなたくましさは、そのような時代背景にぴったりするものだし、吉永の力強い声は、時代の雰囲気にぴったり合致するものである。

東野英治郎 ( とうのえいじろう ) (石黒ジュンの父・石黒辰五郎役)は、1907年(明治40年)群馬県 北甘楽郡 ( きたかんらぐん ) 富岡町(現在の富岡市)生まれで、俳優座で舞台俳優として活躍しながら、映画やテレビにも出演した。1969年からはTBSテレビ系列の時代劇『水戸黄門』で主役の(初代)徳川 光圀 ( みつくに ) を14年間演じ、絶大な人気を得たが、1994年、心不全のため86歳で死去した。彼は、『キューポラのある街』の演技で、毎日映画コンクールで男優助演賞を受けている。この映画で石黒辰五郎は、ジュンの父親にしては少しふけすぎているのがやや不自然だ。この映画の撮影時、彼は54歳であるが、60歳近くに見える。ざらざらした、少しつばがたまるような、滑舌の良い低い声で、平均周波数は125 Hzである。

浜田光夫(石黒ジュンの友人・塚本克巳役)は、1943年(昭和18年)東京都生まれで、日活の『ガラスの中の少女』で始めて吉永小百合とコンビを組んだ。この絶妙なコンビはその後も青春純愛路線の映画で爆発的人気を博した。吉永と競演した映画は44作品もある。代表作は、『キューポラのある街』、『愛と死をみつめて』など。この映画の撮影時、彼は18歳である。滑舌の良い若々しい声で、平均周波数が201 Hzと高く、少し子供っぽい感じもする。

加藤武(野田先生役)は、1929年(昭和4年)東京府東京市京橋区(現在の東京都中央区)生まれ、文学座で舞台俳優として活躍する傍ら、映画やテレビにも数多く出演した。代表作は『風林火山』など。2015年に心疾患のため86歳で亡くなった。この映画の撮影時、彼は32歳であり、歯切れの良い低い声で、平均周波数は122 Hzである。

吉行和子(女工員役)は、この映画の撮影時26歳であり、少し甘ったるい感じの吉行らしい声で、平均周波数は278 Hzである。前年の『あいつと私』の時の声の質とはかなり感じが違う。

以下の五線譜に、主な出演者の声の高さ(平均周波数)の比較を示す。左から右へ、声が高い順に並べた。

声の高さの比較

[ストーリー]

キューポラのある街

映画のオープニング画面 (DVD 『キューポラのある街』 00:00:57の画面)

中学3年生の石黒ジュン(吉永小百合)の父・石黒辰五郎( 東野英治郎 ( とうのえいじろう ) )は、埼玉・川口市にキューポラの設備を備えた鋳物工場に勤めている工員だった。彼は2年前に事故を起こして、その時の怪我のため力仕事ができなくなっていた。

関連地域

『キューポラのある街』の関連地域。川口市は荒川に接している。 (© OpenStreetMap contributors)

そうした中、その鋳物工場は不況の折、丸三という大会社に買収されたため、何人かの行員が首になる。その中に辰五郎が含まれていた。この時、退職金は支払われなかった。収入の道が立たれた上に、ジュンの母・トミ(杉山徳子)が出産し、内職もできなくなる。こうして、ジュン一家の生活が狂い始める。

ジュンは県立第一高校へ進学を希望していたが、現在の石黒家の収入状態では進学はまったく不可能である。中学生のアルバイトは禁止されていたが、ジュンは家計を助けるため、級友の金山ヨシエ(鈴木光子)の ( つて ) で、放課後にパチンコ屋で働き始める。

(・・・以下省略・・・)

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この動画は、電子書籍『声の悩み49種のすっきり解消法 ボイストレーニングのミニ百科事典』の「4.2 トレーニングの準備運動をしよう」の内容を、Haruka(はるか)がわかりやすく解説したものです。

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