技術翻訳者には、英和翻訳と和英翻訳のうちの片方のみを行う方と、両方行う方がいます。
私は最初は英和翻訳と和英翻訳の両方を行っていましたが、しばらくして、和英翻訳を中心に行うことに決めました。
その理由のひとつは、翻訳料金が英和翻訳よりも和英翻訳の方が約2倍もしたことです。私の場合、どちらの翻訳にかかる時間もあまり変わらないので、和英翻訳を中心に行った方が当然収入が多くなります。
また、当初はワープロやパソコンはまだ存在しなく、和英翻訳は英文タイプライターで、英和翻訳はレポート用紙にペン(万年筆)で手書きで行っていました。手書きの文章というものは考えながら書いていると文字が次第に乱雑になり、見にくくなるので、最終的には清書する必要があります。こうした作業は、とにかく中指の鉛筆ダコが痛くなる辛い肉体労働でした。そのため、よけいに英和翻訳を敬遠するようになりました。(最近の若い人は、ペンの持ち方が昔の持ち方とは違うようですが、この新しい持ち方だと、あまり指が痛くならないのかもしれませんね。)
ところで、英和翻訳と和英翻訳の両方を行うことには別のメリットがあります。つまり、両方を行うことで、語学力と文章力にバランスが取れてくるのです。私も今では両方行っています。また、ここ20年以上、ワープロやパソコンを使うようになったので、日本語を書くことは(中指にとって)苦痛でなくなったということも、英和翻訳をするようになった理由のひとつです。
近年、多くの会社では翻訳を外注しないで社内で行う傾向が強くなっています。そのため、翻訳発注量が減ってきています。その意味でも、英和翻訳と和英翻訳の両方行うことが仕事を切れ目なく獲得しやすくするコツかもしれません。