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声の個性を音声学で比較しながら楽しむ方法や自分の声をボイストレーニングする方法を紹介します。

声のトレーニング

3. ボイストレーニング

投稿日:2018年3月16日 更新日:

ボイストレーニング
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目的と種類

人は、誰でも、声の出し方を変えることによって、声の質を変えることができます。人の声を、より良い声に変えるための発声訓練が、ボイストレーニング(voice training)です。最近では、これを短く縮めて「ボイトレ」とも言います。

ところで、ボイストレーニングは、大きく分けて、歌手のためのトレーニングと話すためのトレーニングに分かれます。

ボイストレーニングの種類

  • 歌手のためのトレーニング
  • 話すためのトレーニング

これらのトレーニングの内容には共通する部分もありますが、異なる部分もかなりあります。

このウェブサイトでは、歌手のためのボイストレーニングではなく、話すためのボイストレーニングについて説明しています。






さらに、話すためのボイストレーニングは、専門家対象のトレーニングと、一般人対象のトレーニングに分かれます。

  • 専門家対象のトレーニング
  • 一般人対象のトレーニング

俳優や声優のための専門家対象のボイストレーニングでは、様々な感情表現を自然に行う発声ができるように訓練することが重要になります。

それに対して、一般人対象のボイスとレーニングでは、そのような訓練は不要であり、学校や職場で、適切な大きさで、適切な高さで、滑舌の良い明るい声で発声できるようにするのが目標になります。つまり、俳優や声優のトレーニングと比べて、目標が断然低くなりますので、習得がより容易になります。

そのため、一般人対象のトレーニングは、専門家の指導を受けなくても、独学で、ある程度の成果を上げられると思います。

このウェブサイトでは、専門家対象のボイストレーニングではなく、一般人対象のボイストレーニングについて述べています。

ボイストレーナーの現状

ボイストレーニングを指導する専門家のことを、ボイストレーナー、あるいは、ボイスティーチャーと言います。

ボイストレーニングは、もともとクラシック音楽の歌手の声の改善から始まりました。そのため、ボイストレーナーには、歌うためのトレーニングを行っている人が多いのです。クラシック音楽の歌手は、数百人が入るような大空間で、マイクなしで、最後列の観客までも、声を十分に届かせる必要があります。そのためには、かなりの猛練習で声を鍛える必要があります。

その後、会話用のボイストレーニングが普及しましたが、基本的な考え方として、クラシック声楽用のトレーニング方法の影響がしばらく残っていました。

クラシック声楽では、広い空間でよく響く、通る声が基本的によい声です。そのため、その伝統を引き継いで、会話用の音声であっても、広い空間でもよく響く、通る声が基本的によい声である、といった考え方が今でも強いように思えます。

良く響き、通る声というのは、重厚で立派な声でもあります。そのような声は、肉声を重視する演劇、特に、新劇などで、あるいは、マイクを使っていても商業演劇や街頭演説などではとても有効です。しかし、住宅の狭い部屋の中での日常的な会話や、学校や職場での狭い空間での会話では、そのような立派な声は、とても不自然な、気取った声に聞こえてしまいます。

また、西洋人の明快でよく通る発声のほうが、日本人(あるいは東洋人)の丸っこい、ぼやけた発声よりも優れていると考えるトレーナーも多いようです。確かに、外国人と会話や討論を行う場合は、日本的な発声は不利になるでしょう。

しかし、西洋的な自然な発声を身につけた日本人が普通の日本人相手に会話する場合、問題は起きないのでしょうか? 日本も国際化したとはいえ、外国語がペラペラの日本人は日本語の発音が少しおかしいことがある、と感じるのは私だけではないと思います。

このように、ボイストレーナーの音声感覚と一般人の音声感覚は少し異なっている可能性があります。

ところで、ボイストレーナーには公的な資格はないため、各自が独自の判断で、独自の方法論でトレーニングを行っていることが多いようです。つまり、トレーニングの内容は実に多様性に富み、また、トレーナーの質は玉石混合であると言えるでしょう。したがって、あなたが師事するボイストレーナーを選ぶ際には、書籍やインターネットの情報、各種の実績や評価などを調べて、慎重に行う必要があります。

なお、言語聴覚士という医療従業者用の資格が普及しつつあるので、その資格を持っているボイストレーナーを選ぶのも一つの方法です。

(以上は、2014年9月現在の状況です。)

自分でできる簡単なボイストレーニング

専門のボイストレーナーの指導を受けるほどには声のトラブルが重症ではない場合とか、地方に住んでいて、専門家によるボイストレーニングを受ける機会がない場合には、自分で独学でトレーニングを行ってみましょう。

なお、ボイストレーニングを始める前に、発声のための筋肉をリラックスさせるための準備運動をしましょう。

(準備運動については、ここを参照してください。)

では、以下の音声改善トレーニング方法を参照してください:

小さい声の改善
息を押し出すための筋肉(インナーマッスル)を鍛える、リラックスしながら声を出す、息を出すタイミングと声を出すタイミングを調整する、などのトレーニングが中心になります。

大きい声の改善
息を細く長く出せるようにする練習、舌の根元を動かして喉の奥の空間を狭め、できるだけ小さな声を出してみる練習、などのトレーニングが中心になります。

通らない声の改善
体をリラックスさせる練習、遠くまで声を届かせるための練習、声を高くする練習、滑舌を良くする練習、などのトレーニングが中心になります。

滑舌が悪い声の改善
体をリラックスさせる練習、唇と舌の緊張を解く練習、唇と舌を大きく動かす練習、などのトレーニングが中心になります。

低い声の改善
体をリラックスさせる練習、声を高くする練習、などのトレーニングが中心になります。

高い声の改善
体をリラックスさせる練習、声帯などの発声器官の緊張を解く練習、声を低くする練習、などのトレーニングが中心になります。

舌足らずな声・アニメ声の改善
声帯などの発声器官の緊張を解く練習、声を低くする練習、滑舌の練習、などのトレーニングが中心になります。

モテ声のための訓練
体をリラックスさせる練習、声を低くする練習、滑舌の練習、などのトレーニングが中心になります。

細い声の改善
息を押し出すための筋肉を鍛える練習、体をリラックスしながら声を出す練習、などのトレーニングが中心になります。

息が漏れる声の改善
舌や唇の動きを改善する練習、息漏れやすい音の発声練習、などのトレーニングが中心になります。

かすれ声の改善
肺活量を大きくする練習、肺の周りの筋肉の緊張を解く練習、喉の力を抜く練習、などのトレーニングが中心になります。

喉が疲れる声・喉声の改善
体をリラックスさせる練習、喉の力を抜いて発声する練習、喉を大きく開く練習、などのトレーニングが中心になります。

だみ声の改善
体をリラックスさせる練習、喉の力を抜いて発声する練習、喉を大きく開く練習、などのトレーニングが中心になります。

硬い声の改善
体をリラックスさせる練習、喉の力を緩めて発声する練習、喉を大きく開く練習、などのトレーニングが中心になります。

金切り声の改善
体をリラックスさせる練習、喉の力を抜いて発声する練習、声を低くする練習、大声を出す練習、などのトレーニングが中心になります。

力が入りすぎた声の改善
体をリラックスさせる練習、喉の力を抜いて発声する練習、喉を大きく開く練習、などのトレーニングが中心になります。

鼻声・鼻づまりの声の改善
息を鼻に送りながら、または、鼻に息を送らない状態で発声する練習、などのトレーニングが中心になります。

粘つく声の改善
体をリラックスさせる練習、舌や口の緊張を解いて舌を楽に動かして発声する練習、などのトレーニングが中心になります。

こもった声・暗い声の改善
唇と舌を大きく動かして発声する練習、声を高くする練習、などのトレーニングが中心になります。

老化した声の改善
呼吸に関係するインナーマッスルを鍛える練習、滑舌を改善する練習、などのトレーニングが中心になります。

電話で話す声の改善
体をリラックスさせる練習、滑舌を良くする練習、などのトレーニングが中心になります。

なお、ボイストレーニング中に、周りの人に、自分の練習する声を聞かれたくない場合は、無声音(声帯を震わせない音、つまり、ささやき)で練習しても、練習目的によっては、ある程度の効果を上げることができます。






ボイストレーニングについての本

ボイストレーニングについての本はかなりの数が出版されていますが、その多くは、歌うためのボイストレーニングを扱っています。歌うための訓練は、話すための訓練とはかなり違います。歌うためのボイストレーニングの本を使って、話すための訓練をするのは無理があるでしょう。

また、話すためのボイストレーニングの本の場合であっても、多くの本は、俳優や声優などになりたいプロ志向の人たちを対象にしたもので、かなり高度な理論と訓練法を解説しています。理論好きな人は別として、一般の人がこれらの本を参考にして独学するのはやや難しいでしょう。

一方、プロ志向の人たち向けではなく、一般人向けに限ったボイストレーニングの本もあります。しかし、これらは、プロ志向の人たちを対象にした本とは正反対で、理論が少なすぎたり説明が感覚的過ぎて、かえってわかりにくいものがかなりあります。中には、発声法についてよりも、むしろ、話し方やコミュニケーションについて詳しく述べている書籍もあります。

したがって、一般の人に参考になりそうな発声訓練の実用書はあまり多くありません。

私が読んでみて、良かったと思う本を以下に紹介します。



篠原さなえ著
講談社 ブルーバックス
2012年12月20日初版
Amazonで発売中

著者の紹介:
東京都生まれ。駒澤大学短期大学部国文科卒業。FM東京のDJとしてデビュー後、司会者、レポーター、声優、スポーツ実況アナウンサー、CMのナレーション、銀行ATMの機械の音声など、様々な分野で活躍中。プロ志向の人たちへの個人指導も行う。

この本は、今までにないほど理論的でかつ実践的なボイストレーニングの教科書です。著者は、正しい呼吸法、正しい発声、正しい滑舌についての斬新な理論(3大新理論)を提唱しています。その中では、滑舌の改善方法についての理論と実践方法が特に優れています。この本の内容は声のプロになりたい人たちに最適です。簡単な索引がついているので、便利なハンドブックとしても使えます。

しかし、一般の人たちが独学で自分の発声を改善しようとしてこの本を参考にする場合は、少し説明が精密すぎて、理解するのが難しいかもしれません。

本文中にある図解はとても分かりやすいのですが、それに対して写真が不鮮明なのが玉にきずです。

著者による発声の個人指導については、以下のウェブサイトを参照してください:

篠原さなえ・ナレーションゼミ



村上由美著
平凡社新書
2009年2月13日初版
Amazonで発売中

著者の紹介:
1972年生まれ。上智大学文学部心理学科卒。国立身体障害者リハビリテーションセンター学院聴能言語専門職員養成課程卒業。言語聴覚士。他の著書:「アスペルガーの館」(講談社 2012年発行)。

発声の理論からボイストレーニングの具体的は方法まで、詳細に説明されています。目的別の声の訓練方法も丁寧にわかりやすく解説しています。プロ志向の人から一般の人まで、幅広く役に立つボイストレーニングの基本図書です。

ただし、索引がないので、必要な項目を探すのが大変かもしれません。

著者は、「声のコーチング」という名称でボイストレーニング指導者を対象とする専門的な指導は行っていますが、一般人を対象とするボイストレーニングは行っていないようです。「声のコーチング」については、以下のウェブサイトをご覧ください:

医療コーチング研究会



上野由紀著
ヤマハミュージックメディア発行
2012年3月15日初版

著者の紹介:
上野ヴォーカルアカデミー校長。UENO式ヴォイストレーニングに従って、発声・発話方法、音痴矯正などのレッスンを一般向けに指導している実践家。80年代にデビューした元プロ歌手でもある。

本書の内容はかなりユニークで、割りばしやペットボトルなど身近な道具を使ったユニークなボイストレーニング方法を紹介しています。どのような声にしたい場合はどのような方法があるのかを、具体的に、とても分かりやすく解説しています。索引がついているので、必要な項目が簡単に見つかります。

ただし、理論的な説明はあまりありません。手軽な実用書です。

著者が指導する教室については、以下のウェブサイトを参照してください:

上野ヴォーカルアカデミー

 






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