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紙書籍の長所
紙書籍には電子書籍にはない以下のような長所があります:
- 電子書籍に比べると市場が成熟しているので、販売点数がずっと多くなります。
- 紙書籍を購入すると、紙書籍そのものを所有することができます。そのため、その書籍が不要になったら、古本屋に売却することができます。
- 電子書籍と比べると、紙書籍は読みやすく目が疲れにくいので、難解な内容の本や学習参考書をじっくり読むのにも適しています。また、書籍の中のどの部分を読んでいるのかわかりやすく、現在読んでいる部分の前後にどういう内容があったか把握しやすいため、込み入った内容の小説なども容易に読めます。
- 大型の書籍を作れるので、画集や写真集としても最適です。
- 電子書籍と比べると、紙書籍は他人に簡単に販売したり贈呈したりできます。講演会などで販売したり、教室の生徒さんに購入してもらうことができます。
- 紙書籍は電子書籍よりも価値の高い書籍形態であると一般に認識されています。
紙書籍の短所
一方、紙書籍の短所は次の通りです:
- 紙書籍は印刷費・製本費・運送費(配達費)がかかるので、出版社にかかる費用の負担が高く、そのため、電子書籍よりも定価が高くなります。
- 同様に、出版社にかかる費用の負担が高いので、印税率が低くなります。一般の電子書籍の印税率は70%~35%であるのに対して、紙書籍の印税率は10%程度です。
- 紙書籍は、高齢者や視力の弱い人向けに文字を大きくすると、本自体が大きく重くなってしまい、使いにくくなります。
- 紙書籍はかさばるので、大量に持って乗り物に乗るのには適していません。また、所蔵の書籍が増えてくると、本棚に収まりきれなくなり、邪魔な存在になります。
- 紙書籍には、簡単に動画や音声・音楽を組み込みことができません。
- 電子書籍ほどには、紙書籍は簡単に改訂版を出せません。
紙書籍出版の種類
最近では、紙書籍を出版する方法として次の2種類が知られています:
- 従来の大量生産方式の出版
- オンデマンド印刷による出版
従来方式の出版でもオンデマンド方式の出版でも同じ原稿から作成可能ですが、従来方式では通常数百部以上の冊数を一度にオフセット印刷・製本するため、それなりの期間と費用がかかります。高度な印刷品質と高級な製本が可能ですので、美術書や写真集に特に適しています。
それに対して、オンデマンド印刷の方式(プリント・オン・デマンド(POD))では、パソコンを使って印刷しそれを製本するため、1冊単位で、注文時に注文数だけ作成することが可能です。そのため、その制作にかかる期間と費用は従来方式よりもずっと少なくなります。また、一般的な書籍の、普通の印刷、普通の製本に向いています。オンデマンド方式の出版は、電子書籍出版の一種と考えることもできます。
ただし、一つの本を大量生産する場合は、オンデマンド方式よりも従来方式の方が印刷・製本費用が安くなります。
また、1冊単位ではなく、数冊から数十冊単位で印刷・製本する出版方式(セミ・オンデマンド方式)もあります。その場合は、製作期間と費用は、従来方式とオンデマンド方式の中間になります。
最近の米国ではオンデマンド紙書籍出版が広く浸透しています。ライトニングソース社(Lightning Source。INGRAM CONTENT Group の印刷子会社)は、2012年に5000万冊のオンデマンド紙書籍を発行しました。日本でも、これからはオンデマンド出版が普及してゆくと思われます。